東北被災地 (前編)
10.16.2012
Dan Winey in Design in Asia, San Francisco
Gensler Fukushima

(写真)宮城県志津川病院跡

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今から1年近く前、日本は巨大な地震と津波に襲われ、甚大な被害を受けた。 損壊した福島原子力発電所の画像や、ユーチューブで繰り返し流された津波の映像、次々と更新される死傷者数や広範囲を襲った津波の破壊力に関するニュースはあらゆるメディアを通し、世界中の人々に伝えられた。 日本で一体何が起こったのか。 私は被害を受けた日本の状況を理解しているつもりでいた。 しかし、実は何一つ理解できていなかった事にすぐさま気がついた。 

Gensler Fukushima

(写真) 大川小学校の写真を見つけた。 そこには津波に襲われる以前 の女川町北部が写し出されていた。

地震発生後24時間経たないうちに、世界中のゲンスラー社員からメールが届いた。 日本にいる社員は全員無事なのか、どのように手助けができるのかを知りたがっていた。 幸いな事に、ゲンスラー社員とその家族は全員無事であった。 しかしながら、大地震が各個人に与えたインパクトは計り知れないものであった。

Gensler Fukushima

(写真) 志津川病院のあった町

この度災害に見舞われた地域に対し、ゲンスラーは、まず社員から義援金を募りその義援金を日本赤十字に寄付した。 更にそこで集まった金額と同じ金額を会社として寄付するという”マッチング”制度を導入した。 この制度により、1、2ヶ月のうちに社員から2万5千ドルの義援金が集まり、マッチング制度による会社としての寄付金も2万5千ドルとなった。 これを受け、ゲンスラー東京事務所の社員は、私達が何か直接的に行動を起こして貢献できるプロジェクトはないか、と考えていた。 結果、宮城大学事業構想学部デザイン情報学科の中田千彦先生及び学生の方々と協力し、共同で復興プロジェクトのお手伝いをさせて頂く事が決まった。 宮城大学は被害の最も大きかった地域に位置し、既に被害を受けた地域の復興と 再建に携わっていた。

Gensler Fukushima

(写真) 宮城県志津川病院:志津川病院は津波後残った数少ない建造物のひとつ。 建物は浸水し、109人中74人の患者が亡くなった。

プロジェクト自体はシンプルなものであったが、現地の経済においては重要な意味を持つものであった。 それは、津波に流されてしまった漁師達の作業場である漁師小屋(番屋)を新しく建て直すプロジェクトであった。この地域の漁師達はワカメを養殖しており、日本の経済においても重要な 役割を担っている。 その方達が漁に出る際、網や装置を港で準備する場所として活用して頂けるよう、私達は宮城大学の方々と共に漁師小屋をデ ザインし、建て直すことになった。 この町の住人のほとんどは漁業に携わっている。 それぞれが生活や仕事を立て直さなければならない中で、少し でも私達が住民の方達のお役に立てる事を誇りに思った。

Gensler Fukushima

(写真) 長清水地区において津波後残った数少ない建造物のひとつである、ながしず荘。 津波後は村の避難場所として利用された。

そして私はゲンスラー東京事務所のスタッフと共に、新幹線で東北に向かった。 2時間ほどで仙台に到着し、一緒にこのプロジェクトに携わる中田先生をはじめとした宮城大学の学生達にお会いした。 そこから被災地の中心部、志津川地区へ向けて、更に3時間半ほど車を走らせた。

Gensler Fukushima

(写真) 南三陸町志津川地区

正直なところ、実は今回のこの試みに対して、私は少なからず不安な気持ちをぬぐえなかった。 この地域は安全なのだろうか。 損壊した福島原発の影響はどの程度あるのだろうか。 この地域の殆どが津波にのまれてしまった為、宿泊できる宿は限られていた。 民宿では、私がこれまで経験した事のない、”畳に布団を敷いて寝るスタイルになる”と伝えられた。

ブログ記事後編では、被災地での経験を報告する。

Dan Wineyは設計事務所ゲンスラーの役員であり、太平洋地区のマネージング・プリンシパルである。 ダンの管轄のもと、ゲンスラーの上海と北京オフィスが開設され、現在進行中の上海タワープロジェクトの主要メンバーとしてプロジェクト開始から携わっている。ダンのメールアドレスdan_winey@gensler.com.
Article originally appeared on architecture and design (http://www.gensleron.com/).
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